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半浦太朗のSo What?

気楽に書いてますので、気楽に読んでくださいね

たこぼうず

 

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「たこぼうず」

 

生まれたてのたこぼうずは、足が一本しかありません。
それは、たこというより、さくらんぼか、しぼんだ赤い風船のようです。
足が一本でも、ころりと寝転んでばかりいるわけではありません。つまようじのような足で、ケンケンをするように、部屋のすみからすみまで、ちょこちょこちょこちょこ、動き回ります。

 

「なんで、こんなひょろひょろの足で重たい頭をささえて、ぴょんぴょんぴょんぴょんとびまわれるのかなあ?」

 

そんな風に思っているのでしょうか、まだ赤ちゃんだっただいすけは、たこぼうずを不思議そうに見つめていました。だいすけのおめめはぐっと、大きく見開き、動き回るたこぼうずの足がぴょこぴょこ動くのを、一生懸命に追いました。つまようじみたいに細い足だけれども、柔らかそう。しっぽみたいによく動いて、畳を力いっぱい蹴っている!


たこぼうずの足がちゃんと8本になるのは、大人になってからです。
一回目の誕生日で、もう一本、足がぴょこんと生えてきて、にんげんみたいに二本足ですたすたと歩きます。二本足のたこぼうずは「おはよう」とか「こんにちは」とか「おやすみなさい」とかカンタンなお話もできるようになります。

 

2回目の誕生日で、また足がぴょこんと生えてきて、3本足になります。足が3本ともなると、たこぼうずは、ぐっとどっしりとしてきます。フライパンくらいなら、頭の上にのせてもビクともしません。ただし、どれくらいの重さまで平気なんだろうと、調子にのってフライパンの上にお鍋、お鍋の中にお茶碗、お茶碗の中にご飯も入れちゃえ、という風にどんどんどんどんものを乗せていくと、たこぼうずだって、たこなんですから、怒ってプーッとスミを吹きますのでご用心。


3回目の誕生日で、また足がぴょこんと生えてきて、4本足になります。4本ともなると、たこぼうずはまるでがんじょうなテーブルです。大きさも、テーブルといっしょくらいです。大人の人が頭の上にのってもたこぼうずは涼しい顔です。


4回目の誕生日で、もう一本足が…ではなく、一気に4本の足が生えてきて、たこぼうずはもう大人です。

でも、だいすけのうちのたこぼうずは、4回目の誕生日が来たというのに、足が7本しかありませんでした。


「なんで、うちのたこぼうずは足が7本しかないの?」だいすけはそう尋ねました。
「おかしいなあ?」たこぼうずは7本のうちの2本を使って、つやつや光る頭をポリポリとかきました「でも、7本でも別にいいんじゃない?」
「そんなことないよ!」だいすけは叫びました「足が7本のたこなんて、聞いたことがないよ!それに今日の誕生日パーティーはどうするのさ!」
だいすけは、たこぼうずが、ぜんぶの足を使って握手ができるように、お友だちを、自分を引き算して、7人招待したのでした。
「どうしよう、今さらひとり帰ってくださいなんて、言えないよ」
のんきにかまえていた、たこぼうずもあせるだいすけを見ると、困りだし、二人は顔を見合わせて、は~っとため息をつきました。


「そうだ、ひょっとしたら足をなくしてしまったのかもしれない!」だいすけはそう言うと、なくしてしまったおもちゃが出てきたことのある場所を見に行きました。


「きっと、出てくるよ」たこぼうずは、だいすけに言いました。
だいすけは、ソファのすき間を手でごそごそと探りました。そこから、電車遊びで使う、大切な木の線路が出てきたことがありました。でも、たこぼうずの足はありませんでした。
「大丈夫、きっと出てくるよ」たこぼうずは言いました。
今度は、オーブントースターのフタを開けてみました。そこから隠したつもりで忘れてた、電話のおもちゃが出てきて、ママにしかられたことがありました。でも、たこぼうずの足はありませんでした。
「大丈夫大丈夫、かならず出てくる」たこぼうずは、また言いました。
次こそはと、だいすけは庭に出て、重たくて平べったい敷石をえいやっと力いっぱいめくりました。そこに、大事なスーパーヒーローのお人形を隠して忘れたことがありました。でも、今日は何匹かのダンゴ虫がちょろちょろ動いているだけでした。

 

「だめだ、出てこないや」だいすけが途方にくれそうになったそのときです。ピンポーン!とチャイムの音がしました。パーティーに招待した、7人のお友だちが来てしまったのです。だいすけはあわてて、表に出ると、
「みんな、ちょっと待って。困ったんだ」と言いました。
「どうしたの?」「早くたこぼうずに会いたいよ」「おうちに入れてよ」お友だちたちは口々に言いました。
「じつは…たこぼうずの足が7本しか、ないんだ」
「えーっ」「どうしてどうして」


お友だちたちが、びっくりするのに弱り果てた、だいすけはいつもただいまをするときのくせで、郵便受けの中に手をつっこみました。そこには、いつも入っているペラペラのちらしやハガキではない、何やら大きいものがありました。不思議に思っただいすけが、ぎゅぎゅっ、と引っこ抜いてみると、それは、うす茶色のどっしりとした紙包みでした。黒々と筆で『だいすけさま』と大きく書かれていました。強く握ると、ぐにゃぐにゃとしていました。

 

だいすけは、すぐにわかりました「たこぼうずの足だ!」そう言ってふりむくと、勢いよくドアを開けて家の中に入り、靴を脱ぐのも忘れるほどでした。

部屋に戻ると、たこぼうずは、お茶を飲んで、ゆっくりとしていました。

「たこぼうず、足が届いたよ!」だいすけは言いました。たこぼうずは、口からぷっぷと湯気を出しました。お友だちも、だいすけの後を追って、ぞろぞろと家の中に入ってきました「たこぼうずの足があったんだね」「よかったよかった」「これでパーティーがはじめられる」


「パーティーをはじめるのは、ぼくの足をくっつけてからにしておくれよ」そう言って、たこぼうずはうす茶色の紙包みを7本の足のうちの4本も使って開けました。

そこには、真っ赤でぷにぷにした足が2本、入っていました。
だいすけは驚きました。
「どうして、2本も入っているの?」

「うーん…」本当のところ、たこぼうずにも、それはわかりませんでした。

「うーん…ぼくは…ぼくだけは、9本足のたこぼうずなのかもしれないね」たこぼうずは、自信なげに答えました。


「だったら、もうひとりお友だちが招待できるね!」だいすけがそう言いました。7人のお友だちもつられて、そうだ「○○ちゃんも呼ぼう」「△△くんを呼ぼう」「いやいや公園の野良猫を呼ぼう!」と口々に言い合いました。何だかパーティーがもっともっと楽しくなる気がしました。


「9本足のたこぼうずなんて、初めてだ!」みんなは、わーっ!と歓声をあげました。みんなが嬉しく思ってくれてるのを見て、たこぼうずも嬉しくなりました。

「ボクは本当に9本足のたこぼうすなのかもしれないなあ」

たこぼうずは、そう思ってみんなを優しくみつめました。
その日は、とても楽しい誕生日パーティーになりました。