太朗の主夫日記 ~So What?~

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ド不幸自伝⑧の2〈修正版〉 ~あの子との別れ~

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【お知らせ】
前回、自伝の⑧を書いたのですが、

読者の方から、ご指摘を頂いたことで、作品として大きな弱点があることに思い当たり、やや修正させてもらいました<(_ _)>
これを⑧〈修正版〉として、2回に分けてアップしますね。(長くなったので)
修正前のも、そのまま残しておきます。
気合いを入れ直す意味で、画像もリニューアルしてます。今さら。やはり読んでもらえてナンボですね(`・ω・´)そんなわけで、是非ご覧になって見て下さい。


≪前回までのあらすじ≫

:20代前半。両親の借金のため、兵器工場で、働くことになった自分は‘モアイ’像によく似た男と、知り合いになった。自分はモアイと、頽廃的な遊戯を繰り返した果てに、消費者金融でモアイのために金を借り入れる。モアイは逃走し、ショックとストレスから精神を破綻した自分は、日常生活が困難になって行く:

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苦しい、
ただひたすら、苦しい。
それだけだった。
やはり、
薬は効いているのかどうか、よくわからない。
いや、効いているはずもない。
効いているというのなら、この苦しさにはどう説明がつくのか。
寝てる時間以外は、全て苦しかった。
(寝ることができたのは、幸いだった)
寝る前には必ず、
「何かの拍子でこの苦しさが、嘘のようにスッと消えている、
雨上がりの朝のような目覚めを、迎えていないものだろうか?」
と思うのだった。
だが、幾日経っても、
それこそ、1999年7月に来るはずだった、
〈恐怖の大魔王〉に襲われるかのごとく、
目覚めたことそのものが絶望のような、
鉛色の朝が繰り返しやってくる。

昼になると、
食べて、排泄し、動く。
そうして生きようとする。
かろうじて可能だった外出は、
近場の土手を散歩することだった。
それは、周囲の人間から見れば、
ひとりの若い男性が、
単に、歩行をしているだけに見えただろう。
もちろん、そのようなはずはなく、
自分の中では、まるで命の奪い合いのような、
無慈悲で冷酷な戦いが、繰り広げられている。
そして一方では、肉体を飛び出した、
意識だけのもうひとりの自分が、
やもりのように川べりを這いずりながら、
荒い呼吸をしている瀕死の肉塊となった自分を、
冷たく見下ろしている。

携帯電話は、必ず持ち歩いていた。
万が一、自分の意識があらぬ方向に飛んでいったときに、
連絡方法が何もないと言うのは、絶望的だったからだ。
だが、そんな状態でも、
自分はなるべく電話などに頼らないでおこう、
と思っていた。

(電話をしたところで、何になる?どう説明する?)

仕方がないという思いの方が、強かったのだ。
だから、
病院に電話をした、あの瞬間というのは、
どれほどまでの症状が、出ていたのだろう?と思う。

「どうされました?」

看護師だろうか、女性の声だった。

「精神科にかかっているものです。遠藤先生とお話できないでしょうか?」
「遠藤先生は、今診療中です」
医者に接触することができないと、
わかった瞬間、自分の中の理性の防波堤が崩れ落ちた。

「なら、もう麻薬でも何でも打ってください!苦しいんです」

まるで〈冷たい七面鳥〉だ。
「そんなもの、ありません!」
看護師らしき女性は、諭すというより、本気の怒りの声でそう答えた。


次に電話をしたのは、
あの、カウンター・レディーの彼女だ。

「何かあったら電話ちょうだい」

彼女のこの言葉を、思い出したのだった。
考えて見れば、
連絡はいつもメールで済ませ、
一度も、こちらから電話をしたことはなかった。
このような形で、
初めて電話をするというのは、馬鹿馬鹿しいことだった。
どうして、もっと楽な気持ちで電話をして、
「愛している」と、告げられなかったのか?

「一体、今どこで何をしてるんや!」と、彼女は言った。

「苦しい、苦しいねん」
質問には答えられず、まず先に苦痛を訴えた。
それを聞いた彼女は、理由を問うより早く、
「牛乳を飲み!牛乳。少しラクになるはずや」と言った。
「牛乳…無い、外」
「どうしたん?一体」
「○○(モアイが名乗っていた名前)にカネ貸してん…」
それを聞いた瞬間、彼女は何もかも察したように、

「何で、あんな奴に金を貸した!」と言った。

夜の街つながりで、彼女はモアイのことを知っていたし、
自分がモアイの粉もの屋に、通いつめていたことも、
もちろん知っていた。
(心配していたのかもしれないな)
と、自分は思った。
今さら、
モアイにカネを渡していたような、自分の人格を、
改まって白状してしまえば、全てが終わることはわかっていた。
(もっと、早く言っておけば良かったのかも知れないな)
ほんの少し、後悔した。

「切るよ」

と、彼女は言った。
「うん」自分は言った。
「もう、良いの?切るよ」
「…うん」
「…切るよ」

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(戻っておくれ)

とでも、自分は思ったのだろうか?
戻ってほしい人とは、誰?
彼女?
それとも自分自身?
戻ってきたとしても、何処に戻る?
あの夜の街の何処にも、生活なんて存在していない。
戻るような場所など、最初から無かったのだ。

つづく→

*この自伝は、事実を元にして書いていますが、あくまでフィクションです*