たろうの音楽日記

日々の音楽活動に関する覚え書きです。

12月13日~劇団石(トル)の『キャラメル』を観に行く~

劇団石(トル)の『キャラメル』を観に行く機会は、
何回かあったはずだが、
意図的に避けていた。
というより、
決して観に行かないでおこうと、思っていた。

理由は簡単で、
劇のテーマがわかりきっていたから。
加害の感性を、色濃く持つ自分が、
わざわざ、
しんどい思いをしに行くはずがなかった。

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ところが急に、
この、
12月13日の、滋賀県栗東芸術会館での公演を、
見に行く気になった。
タイミングもあったが、
何となく、
劇に自分が呼ばれている気がした。
(理由は、後で気づくのだが)

そうは言っても、
私にとって『キャラメル』を観に行くことは、
重荷であることには間違いなかったし、
開演時間ギリギリに、
隠れるようにして、栗東駅に到着した。
会場に滑り込み、
観劇に来た実感が無いまま、
幕が開く。

劇団石(トル)の舞台を見に来たのは、
初めてではない。
だから自然と、
今まで、散々自分を笑かしてくれた、
きがんさんの躍動する空間の中で、
私は寛いでいた。
ひょっとしたら、
他人にこの劇を説明するとき、
「ああ、喜劇やで」
と説明するかも知れない、と思った。
僭越ながら、
自分の感覚に、少し似ているなと思った。

しかし、
劇がやがて過去にタイムスリップするのは、
目に見えていたので、
現実の私は全く笑ってはいない。
ハルモ二があの日に戻った時、
自分の中に様々な悪夢が蘇った。
レイテ島で死んだであろう祖父は、
慰安所に行ったのか?
テレビ画面で、
アボジ!」と叫ぶ彼女らを見て、
「(テレビを)消せ!」など罵詈雑言を浴びせた、
絶縁した実母の、強力な差別性。
その血を引く自分は、
慰安所にいたら、何をしていたか?
いや、それは誤魔化しだ。
単に、
自分の人生を思い出したら良い。
「あなたが謝る必要はない」
と、俺に言うあなたは、
一体俺の何を知っているのだ?

きがんさんは、
彼女たちの魂を、
自分の肉体に呼びよせている。
同時に、
自分自身も世界に晒している。
そう見える。
私は、
泣きも笑いもせず、
ずーっと無表情で観ていたと思う。
感情を表に出すことができない。

(私は、何ということをしてしまったのだ)
自分の人生を悔いる。



救われた気持ちになったのは、
芝居が終わった後の、
きがんさんの口上だった。
そこでしか聞けない話を、
ここに書く必要はないし、
また、話も変わっていくのだろう。
ただ、
この12月13日の口上を聞いて、
わかったのが、
私はハルモ二に会いたくて、ここに来たということだ。
それだけのことだった。
普通に考えれば、
会うことはかなわない。
どうすれば会えるのか?
きがんさんの表現を通して、
劇団石(トル)を通して、会うしかない。

そして思った通り、
私には、会わせる顔などあるはずもなく、
本能的に最後尾の席で観劇していた。
彼女らの、
パーティーを、
悪夢を、
レボリューションを、
隠れた場所から見ていた。
見ればみるほど、
いつものように、
私は自分を許せなくなる。

だから、
観客席にいた知り合い、
誰とも話す気になれず、
行きと同じように、
帰りも逃げるようにして、
足早に会場を去った。
今後も、誰とも話すことはないだろう。



特筆すること。
帰り道、
会場から、栗東駅までの遊歩道を歩いている間、
私の胸の中に、ほんのりと温かさが湧いたのだ。
突然だった。
胸の中に、
ピンク色の炎を燃やしたランタンのようなイメージが、
湧いたのだ。
それは、実にあたたかい気持ちだった。
あの場(演劇)に立ち会わなければ、
湧かない感情だったと思う。



電車に乗ってしまったら、
そんな温かい感覚は吹っ飛び、
元の、
自分が許せない、
という気持ちに戻るのだが、
あの、
ほんの数分間の温かい感覚は、
今までの人生で、一度も感じたことはなかったし、
今後生きて、生活していく中で、
あれを経験したことは、
私の歩みが、少しでも希望の方向に向かう、
標になるはずだ。

ありがとう、きがんさん。
ありがとう、劇団石(トル)



【少女】作詞作曲:たろう

私はここにいる 私はここにいる

どこにも行きません
どこにも行けません
ここから動かない
ここから動けない

いつでもこの場所に座って
あなたの心 揺らし続けてる

だからここにいて

*

私はここにいる 私はここにいる

何も気にしないで
何も気にしないで
どこにも行きません
どこにも行きません

あなたを許せる日は来ない
だから安心して苦しんで

ここにいて 安心して 苦しんで

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